——精神的な波を抱えてこられた方の、ある事例の記録
【はじめに、お読みください】
このセッションは医療行為ではありません。病気を治すことを目的とするものではなく、神経系の余分な緊張を抜き、本来の働きに戻りやすくする「補完としてのケア」です。通院中の方は、必ず主治医にご相談の上でお受けください。
ある日、ご連絡をいただきました
12回コース途中で、そのクライアントさんから一通の連絡が届きました。
「いま、海外で活動を広げる準備中です。良いご縁をいただきました」
この方の悩みは、不眠とひどい肩こりでした。
長年眠れない毎日が続き、思考が止まらず、夜も薬を飲んでも浅い眠りしか得られない。日中の仕事には強い意志があるのに、神経が高ぶったままですぐにイラついていました。肩は、長年の疲れが鉄のように溜まっていました。そんな状態で、私のもとを訪ねてこられた方でした。
精神的な波を抱えておられ、主治医のもとで治療を続けながら、「補完」としてのケアという位置づけで、12回継続コースを始めました。
その方は、いま念願の海外進出に向けて、あちこちで動いておられます。 ご家族からは「発症する前の本人に戻った」という言葉までいただきました。
この記録は、その変化の道のりを、神経の側から書き残したものです。
Before / After ――12回のセッションの前と後で
| 観点 | Before(セッション開始前) | After(12回コース後・現在) |
|---|---|---|
| 眠り | 長年、眠れない・眠りが浅い日々 | 薬を減らしながら、自然に眠れるように |
| 肩・体 | 鉄のように凝り固まっていた肩、芯にある緊張 | 体が柔らかくなり、筋肉も緩んだ |
| 感情の波 | すぐにかっとなり、周囲が緊張していた | 穏やかさが戻り、苛立ちが大きく減った |
| 眠る姿勢(奥様の観察) | 縮こまって丸まって寝ていた | ベッドで大の字になって眠るように |
| 意識の向き | 常に外へ向き、追われる感覚 | 内側へ向き、暮らしや家の整理に関心が戻る |
| 自己認識 | 自分を認める言葉がほぼ出なかった | 「俺すごいわ」と自然に出るように |
| 服薬(主治医と相談の上) | 3種類 | 1種類に減薬 |
| 行動の射程 | 国内の生活で精一杯 | 海外で活動を広げる転機を迎える |
1. はじめにあった状態 ――「眠れない」と「肩こり」の奥にあったもの
最初のご相談は、不眠と、ひどい肩こりでした。
ですが、Oリングテストと身体への触れ方で見えてきたのは、それが単なる症状ではなく、神経系全体が長年「警戒モード」で固定されている状態だということでした。
ポリヴェーガル理論で言えば、交感神経が高ぶったまま下りてこられない。同時に、深いところでは凍りつき(背側迷走神経)が起きていて、身体は緊張と疲弊のあいだで揺れていました。
奥様が後におっしゃった「縮こまって丸まって寝ていた」という姿が、この方の神経の状態をいちばん正確に表しています。
寝るときでさえ、防御の姿勢を解けなかった。 肩は、その緊張を背負い続けていました。
これは性格の問題ではありません。神経系が、長年の生存戦略として、丸まることと、肩で守ることを選び続けていたのです。

2. セッションで、何をしたか
ここが、このケースのいちばん大事なところです。
この方は経営者ですが、精神的な波を抱えておられる方です。施術は、私のメインターゲット(リーダー層・経営者層)へのフルコースとは違います。何をするかと同じくらい、何をしないかを判断することが大切でした。
脳への直接介入は、しない
通常のセッションでは、脳幹や深部の脳エリアに気功で介入します。 ですが、この方のケースでは、脳に直接触れることは、しないと判断しました。
精神的な波を抱えておられる方の脳は、すでに薬による調整を受けています。そこに気功で直接介入を加えることは、本人の安定を揺らすリスクがあります。
ですから、私は最初から「脳神経には触れない」という選択をしました。
では、何をしたか ――内臓からのボトムアップ
実際に行ったのは、内臓からのボトムアップを主軸にしたアプローチです。
身体の末端や内臓から穏やかに整え、その変化が結果として脳に届くようにする。 脳に直接何かを加えるのではなく、脳が自分のペースで安心していけるように、土台を整える――そういう順序です。
具体的には、回ごとに状態を見ながら、次のような場所を扱っていきました。
- 内臓のエネルギー調整(大腸・小腸など、その日に滞っている臓器)
- 神経の出口(迷走神経の出口にあたる首まわり)
- 末梢神経(体の表面・四肢の神経)
- 肩(主訴のひとつ、長年の緊張の堆積場所)
- 背中・腎臓まわり(警戒のスイッチが入りっぱなしになっていた箇所)
- グリンパティック系(脳の老廃物を排出する仕組み。脳に触れずに、外から清掃を促す)
「触れる」と「触れない」を、毎回判断する
毎回同じことをしたわけではありません。 その日その日のOリングテストで、「今日はここに触れていい」「今日はここはまだ早い」を判断しながら進めていきました。
回が進むにつれて、触れられる範囲が、少しずつ広がっていきました。
最初は触れられなかった場所も、神経系が安全を学習していくにつれて、許容できるようになる。 これが、神経再起動セッションの、本当の進み方です。
3. 経過の中で起きた変化
初期(1〜4回目):「眠たい」が出てくる
1回目のセッション後、ご本人の口から「眠たい」という言葉が、自然に出てきました。 横で見ていた奥様が、とても驚かれました。長年、眠ることそのものが苦手だった方が、自然に眠気を口にした――これは、緊張が抜けはじめた最初のサインです。
2回目以降、セッション中に意識を失うように眠られることが増えました。 遠隔セッションのため、眠っていても施術は進められます。むしろ、眠っているときのほうが、神経系には深く届きます。
中期(5〜8回目):内側への転換
5回目を過ぎたあたりから、ご本人と奥様双方から、はっきりとした変化の言葉が届くようになりました。
「気持ちが自然に戻る、という感じです。意識を変えようとしなくても、体と神経から整えていくだけで、自分の意識がこれだけ変わっている」(ご本人)
「すぐにかっとなることが多く、周りがいつ怒るかとびくびくしていたような状態でした。それが穏やかになったことが本当にありがたいです」(奥様)
この時期、薬は主治医との相談のもと、3種類から1種類に減りました。
後期(9〜12回目):新しい回路の定着
後期は、緩んだ状態が日常の中に定着していく期間です。
奥様からは「家の整理や修理を、どんどん進めるようになった」という観察が届きました。
外への意識から、内側の暮らしへ。 これは、神経系が安全を学習し、本来の生活への関心が戻ってきたサインです。
4. 私の観察 ――何が起きていたのか
このコースを通じて、私が観察していたのは、次のようなプロセスでした。
警戒モードの段階的な解除
長年、警戒モードで固定されていた神経系を、一気に緩めることはできません。むしろ、急に緩めると、過去に押し込めていた感覚が一度に出てきて、本人を圧倒してしまいます。
ですから、回ごとに少しずつ、身体が許容できる範囲で、「もう警戒しなくていい」という信号を、内臓と末梢神経の側から送り続けました。
アストロサイトによる定着
神経系の変化は、その場で完結するものではありません。
セッションで開かれた新しい回路は、脳内のアストロサイトという細胞によって、約1週間かけて物理的に定着していきます。
この方が「セッションの1週間後に、腸の調子が整ってきた」と話してくださったのは、まさにこの定着のタイミングと一致していました。
「治した」のではなく、「邪魔を取った」
ここが、いちばん大事なところです。
私は、この方の何かを「治した」のではありません。 ただ、本来の神経系の働きを邪魔していたものを、少しずつ取り除いていっただけです。
しかも、取り除く範囲も、毎回判断しながら、安全な分だけ。 脳には、最後まで触れませんでした。
それでも、これだけの変化が起きました。 それは、この方ご自身の身体に、もともと戻る力があったからです。
「俺すごいわ」と言ったのは私ではなく、この方ご自身。 海外で良いご縁を掴んだのも、この方ご自身。 家の中を整え、奥様との関係を整えたのも、この方ご自身です。
私は、伴走しただけ。 本来の力を取り戻すための、土台を整えただけです。
5. ご家族からのお言葉
このケースを記録するうえで、私がいちばん大事にしたいのは、奥様からのお言葉です。
ご本人の主観的な変化だけでなく、いちばん近くで暮らしておられる方からの観察。これは、何より客観的な変化の証言になります。
「今までは、すぐにかっとなることが多く、周りがいつ怒るかとびくびくしているような状態でした。それが穏やかになったことが本当にありがたいです」
「縮こまって丸まって寝ていたのに、今はベッドで大の字になって寝ています。それがすごくびっくりしています」
「外への意識から、内への意識に向くようになりました。家の中や外壁、倉庫、引き出しまで、大掃除や修理、整理をして、どんどん不要なものを手放しています」
そして、最近いただいたお言葉。
「発症する前の本人に戻ったようです」

6. このケースから、私が学んだこと
このクライアントさんは、本来私のメインターゲット(自分が看板のリーダー層・経営者層)ではありませんでした。
精神的な波を抱えておられ、主治医のもとで治療を続けておられる方。 その意味で、私はずっと「補助・保険」というスタンスを崩さずにきました。脳には触れず、内臓からのボトムアップで、毎回「触れていい範囲」を判断しながら進めました。
それでも、これだけの変化が起きました。
私が思ったのは、神経の働きには、診断名は関係ないということです。
精神的な波を抱えていようと、リーダーとして責任を背負っていようと、コーチや起業家として走り続けていようと――神経が「警戒モード」で固定されている、という構造はまったく同じです。
そして、その警戒モードが緩めば、人は本来の自分に戻っていきます。 医療が病気を診るのとは別の角度で、神経系そのものを整えるアプローチには、確かに役割があるのだと、このケースを通じて確認できました。
最後に ――この記事を読んでくださっている方へ
もし、あなたが――
- 学び尽くしたのに、なぜか動けない
- 朝起きると、胸や肩に「鉄のような緊張」がある
- 周囲には「安心していい」と伝えるのに、自分自身が安心していない
- 思考が止まらず、夜も浅い眠りしか得られない
- 決断のたびに、体が反応して動けなくなる
そんな感覚をお持ちでしたら、それは意志の弱さではありません。 神経系が、長年の生存戦略として、警戒モードで固定されているサインです。
私のセッションは、病気を治すものではありません。 ただ、警戒モードを少しずつ緩めていく、補助としてのケアです。 あなたの状態に合わせて、何をして、何をしないかを、毎回判断しながら進めます。
緩んだあとに、何を選び取るかは、あなた自身です。 そして、あなたの神経系は、本当はもう、戻り方を知っています。
※ 本記事に登場する事例は、ご本人の許可を得たうえで、個人が特定されないよう加工してあります。
※ 本セッションは医療行為ではありません。通院中の方は、必ず主治医にご相談ください。
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