「力を抜いてください」
そう言われて、すっと力を抜くの、難しく無いですか。
私自身がそうでした。抜こうとするほど、肩に力が入る。「抜かなきゃ」と思った時点で、もう力んでいる。
頑張れる人ほど、これにハマります。
責任感があって、行動できて、エネルギーもある。だから、うまくいかないときは. 「もっと頑張ろう」とする。それしか知らないから。
でも、ここに落とし穴があります。
アクセルを踏んでいるのに、進まない。それは、アクセルが足りないんじゃありません。 気づかないうちに、ブレーキも一緒に踏んでいるんです。
自転車を思い出してみてください。
坂道で「進まなきゃ」と力んでハンドルを握りしめると、かえってフラフラして進みません。肩の力を抜いて、ペダルだけに集中したほうが、すーっと進む。
マラソンの登り坂も同じだと言われます。上半身をガチガチに固めて登ると、すぐ消耗する。力を抜いたほうが、長く、楽に進める。
「力を抜いたほうが、力が出る」。これは精神論じゃなくて、体の仕組みの話です。
ひとつ、知っておくと面白いことがあります。
体を動かすとき、筋肉は「進める側」と「止める側」がペアで働いています。 専門的には拮抗筋(きっこうきん)と言います。
アクセル役の筋肉と、ブレーキ役の筋肉です。
力みすぎると、この両方が同時にぎゅっと働いてしまう。進めたいのに、自分でブレーキも踏んでいる状態。これを「同時収縮」と呼びます。
つまり「力が抜けると動きやすくなる」のは、気のせいでも根性でもなく、
ブレーキ側の筋肉がゆるんで、アクセルだけが効くようになるから。
体の中で、ちゃんと理由があるんです。
ここで、いちばん大事なことを言います。
「じゃあ力を抜けばいいんだ」——そう思っても、抜けないんですよね。
なぜなら、その力みは、あなたが意志で入れているわけじゃないから。神経が、あなたの知らないところで、勝手にブレーキを踏ませているんです。
危険を感じたとき、体を固める。これは神経の大事な働きで、悪いものではありません。ただ、長く頑張ってきた人は、このブレーキが踏みっぱなしのクセになっていることがあります。
だから「気合いで抜こう」としても抜けない。当たり前なんです。意志じゃ届かないところで起きているんだから。
私のやっていることは、シンプルに言うと、その勝手に踏まれているブレーキを外すお手伝いです。
アクセル(あなたの行動力)はそのまま。むしろ、もっと頑張れとは言いません。それをやると、神経はもっと緊張して、ブレーキを強く踏んでしまうから。
外すのは、ブレーキのほう。同じアクセルで、すーっと前に出られるようになる。
ほんの数年前まで、私自身が「もっと頑張れば」と思って空回りしていました。73歳になって、自分の身体でこれを確かめました。力を抜くほうが、力が出る。順番が、逆だったんです。
あなたが進めないのは、力が足りないからではありません。
ダメなわけでも、年のせいでもありません。ただ、知らないうちにブレーキを踏んでいるだけ。そして、それは外せます。
力が抜けるほど 力が出る

